会長挨拶(2018.4-2020.3)

ごあいさつ

2018会長近影公益社団法人日本医学物理学会
会長 赤羽恵一

 医学物理学は、物理工学の知識・成果を医学に応用・活用する学術分野で、医学・医療への貢献を通じて、人類の健康に寄与する学問です。日本医学物理学会は、日本医学放射線学会物理委員会を母体とし、日本医学放射線学会物理部会を経て日本医学放射線物理学会と変遷、2000年に日本医学物理学会と統合され、現在の日本医学物理学会が設立されました。2010年には第100回学術大会を開催するなど、およそ65年の歴史を有する学会です。2011年10月には、一般社団法人日本医学物理学会に、2018年5月には公益社団法人日本医学物理学会に認定されました。

 発足から現在に至る間、医学物理学を取り巻く状況と、その役割も変化してきました。医学物理学が放射線診療において、極めて重要な基礎を担うことに変わりはありませんが、科学技術の高度化と社会情勢の大きな変化に伴い、対象となる分野と内容の広範化が進みました。実際、対象となる専門的知識及び技術も、多岐にわたっています。より高画質な放射線診断画像、より複雑化した高精度な放射線治療法の開発により、診断能と治療効果は益々高くなってきました。進歩し続ける科学技術に時宜を得た対応をするため、そして更に進歩を先導していくためには、学会に高い科学的水準が求められます。本学会も、医学物理の高度な議論を自由闊達にできる場を、学術大会等の開催や機関誌刊行、他組織との交流などを通して提供することで、医学物理の進展に貢献する役割を果たしていきたいと思います。

 放射線の利用が増加する一方で、過去に起きた原子力・放射線事故により、医療を含む放射線の適正利用に対する人々の関心も、とても高くなっています。日本は、他国に比べて放射線診断の頻度及び集団線量が大きく、医療被ばく大国と言われています。数多くの先進的放射線診療機器を有し、医療保険制度により高度な医療が広く提供されていることは、世界に誇ることのできるものです。一方で、合理的に医療被ばく線量を低減する余地は、まだ大きく残されています。そのためには、国内状況に適した国際的防護基準の導入、放射線照射の適切な条件設定、機器の品質管理、被ばく線量計算及び評価等が重要です。

 これらに関わる医学物理学的な知識・技術を有する専門職として、国際的には医学物理士という資格が認められており、放射線診断・放射線治療・核医学の各分野で重要な役割を担っています。本学会は、日本の医学物理学教育・医学物理士認定に、当初から深く関わってきました。高度な医療は、様々な職種が協力し合うことで初めて可能になります。また、国内外の関連諸団体との協力・国際交流も、結果的に医療の質の向上に大きな影響を与えます。本学会も、より学際的・国際的に活動範囲を広げることで、複雑化した諸問題に取り組んでいくことができると考え、課題解決に向けた活動を積極的に推進したいと思います。

 国際社会が混迷を深める中、日本では少子高齢化が進み、疾病構造及び医療の状況も変化してきました。また、インターネットの普及は、社会構造自体へ大きな影響を及ぼしています。更に、人工知能の進歩は、人間社会そのもの、そして放射線診療技術も大きく変革させることでしょう。現状だけでなく将来生じ得る課題を、医学物理学的視点から迅速かつ的確に把握し、科学的かつ合理的な解決に取り組んで行くことが求められています。本学会は、時代の要請に応えるだけでなく、時代の先を見据えた医学物理学の発展・更なる医療への貢献を目指します。会員をはじめ、医学物理に興味ある方々の積極的なご参加・ご支援を心よりお願い致します。

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