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線量限度

 

線量限度の数値

ICRP

 最新のICRP勧告:ICRP 103で勧告された線量限度を以下にまとめます。

表:実効線量(均等被ばく)に関する線量限度
一般 100 mSv/5年かつ50 mSv/1年
緊急作業 100 mSv

表:等価線量(不均等被ばく)に関する線量限度
一般 眼の水晶体 100 mSv/5年かつ50 mSv/1年*1
皮膚 500 mSv/年
女子 妊娠中の場合(申告後、残りの妊娠期間)、胚/胎児に対し1 mSv
緊急作業 眼の水晶体 300 mSv
皮膚 1 Sv
*1:水晶体の線量限度変更に関しては、放射線審議会が、ICRP118の線量限度100mSv/5年、かつ50mSv/1年を取り入れることが適当であるとの意見申し出を提出し、労働安全衛生法及びRI法等の国内制度に取り入れられた。

国内法令

 2018年現在、ICRP103は完全には日本国内法令に取り入れられておらず、現行法令(放射線障害防止法(放射性同位元素等規制法)、医療法、電離放射線障害防止規則等)の線量限度は、ICRP60に準拠しています。しかしながら、数値に大きな差はありません。線量限度を下記にまとめます。

表:実効線量(均等被ばく)に関する線量限度
一般 100 mSv/5年かつ、50 mSv/1年
女子 5 mSv/3ヶ月*2
内部被ばく1 mSv/妊娠中*3
緊急作業 100 mSv
*2:ICRPとは異なる国内法令独自の線量限度です。
*3:ICRP60における勧告。ICRP103と異なります。

表:等価線量(不均等被ばく)に関する線量限度
一般 眼の水晶体 100 mSv/5年かつ50 mSv/1年*1
皮膚 500 mSv/年
女子 腹部表面 2 mSv/妊娠中*4
緊急作業 眼の水晶体 300 mSv
皮膚 1 Sv

*4:ICRP60における勧告。ICRP103と異なります。

線量限度の根拠

2018年現在、最新のICRP103勧告では、ICRP60で勧告された線量限度の値を引き続き適切なものとして扱っています。

  1. 実効線量
    ICRP60では、UNSCEAR1988年報告において、広島・長崎の原爆被爆者におけるがん死亡率の観察値に基づき算出された年がん死亡に対するリスク係数を用いて、被ばくによる寄与死亡の生涯確率、平均余命損失、年齢別死亡率の増分を算出し、これらが容認不可なほど高くならない値として、線量限度を生涯線量で1 Sv、年実効線量20mSvと決定しました(ICRP60 5.3.2)。この条件での寄与死亡確率は3.6%、18歳における余命損失は0.5年、年齢別死亡率は65歳以下について0.1%未満であると評価されています。年最大50 mSvは、ICRP 1956年勧告で、他のリスクより十分低いとして設定された許容線量0.3mSv/週を引き継いだ値です。
  2. 眼の水晶体の等価線量
    ICRP41において、白内障に対する推定しきい値は150mSv/年とされました。ICRP118では最新の疫学研究(原爆被爆者、チェルノブイリ作業者、IVR従事者等)の結果からしきい値を0.5Svと勧告し、年平均20mSv、1年最大50mSvを線量限度として勧告しています。
  3. 皮膚の等価線量
    ICRP60において、局所被ばくにおける確定的影響防止のため500mSv/年と勧告されました。
  4. 妊娠中の女性に対する等価線量
    ICRP60において、女性作業者の胚や胎児は公衆と同程度に防護されるべきとの方針が定められ、腹部表面で2mSv、内部被ばくで年限度の1/20(1mSv)とするよう勧告されました。ICRP103では残りの妊娠期間中での追加線量が1mSvを超えないよう防護すべきと勧告されています。
  5. 女性一般に対する実効線量
    現行のICRP勧告においては女性一般に対する特別な防護は求められていません。1962年のICRP6で、生殖年齢の女性作業者について年50mSvの範囲内で妊娠から最初の2ヶ月間での胚の被ばく線量が10mSv未満となるよう、13mSv/3ヶ月という線量が設定され、日本国内法もこれに基づきました。(浜田信行、妊娠作業者・胚・胎児の放射線防護:ICRP 勧告の変遷と現在の課題、Jpn. J. Health Phys., 52 (3), 159-166 (2017))。2001年にICRP60の国内法令に取り入れる際、放射線審議会による「ICRP1990年勧告(Pub.60)の国内制度等への取入れについて(意見具申)」で引き続き3ヶ月毎の制限をつけることが定められ、年平均20mSvに基づいて5mSv/3ヶ月の制限が採用されました。