第118回日本医学物理学会学術大会

大会長挨拶

この度、平成31年9月12日(木)~15日(日)の4日間にわたり、福井県国際交流会館と福井県県民ホール(福井県福井市)において第118回日本医学物理学会学術大会(主催・(公社)日本医学物理学会)と第8回放射線治療品質管理・医学物理講習会(主催・(一財)医学物理士認定機構、共催・(公社)日本医学物理学会)を開催することになりました。本学会の前身を含め、福井県では初の開催となります。その大会長として皆様をお迎えすることは、ほんとうに光栄なことです。当地にお越しになって参加される皆様にはあつく御礼申し上げます。

福井県と医学物理の関係としては、とくに原子力発電所が多数立地していることが側面としてあげられます。この特性により、福井県内に原子力技術を利活用する施設が複数建設されています。そのうちの一つが私の所属している若狭湾エネルギー研究センターです。平成10年に開所した施設(福井県若狭湾エネルギー研究センター)には、タンデム加速器とシンクロトロンを軸とした多目的加速器システムが設置されていて、陽子・ヘリウム・炭素等のイオンを加速可能です。それまでの私は実験原子核物理を志していましたが、施設を運用する(財)若狭湾エネルギー研究センター(現在は(公財))に勤務してからは医学物理に転進することとし、この装置を使用して研究段階であった陽子線治療の臨床研究開始に取り組みました。粒子線加速器という病院・医学スタッフとは元来相容れてこなかったプラント装置を立ち上げながらかなり苦労した結果、患者さんを無事に治療し、引き続いて福井県立病院陽子線がん治療センターの立ち上げにも参画して運用開始されることで、陽子線治療普及の波をこの地方にも到達させるという、類まれな経験を積みました。

今大会では、このような粒子線にゆかりがある地域での開催ということで、粒子線治療における位置決めに関するセッションを企画いたしました。

その他にも、特別講演の演者である岡沢秀彦先生が在職しておられる福井大学高エネルギー医学研究センターは、やはり原子力技術の利用の一環として設置され、その後は大きな成果を上げ続けています。岡沢先生にはその内容のご紹介をお願いしています。

さて福井県には当学会の会員数は非常に少なく、そして県内の大学には保健学科もないことから、大会の開催準備や運営にあたってどのようにスタッフを確保するかが最初の課題となりました。幸いなことに、当地では年2回福井県放射線治療研究会が開催されており、放射線治療にかかわる医師・技師・医学物理士・看護師・ご協賛企業が一堂に会し顔を合わせる機会が従来から比較的多く、関係の皆様のお知恵をお借りすることができました。その結果、学会員の所属する各病院等の所属部署にご協力ならびにご理解をお願いし、医学物理を現場で実用しておられる学会員の皆様に実行委員として携わっていただくことになりました。福井県内の医学物理関係者を、いわば総動員した形になっています。この場をお借りして、実行委員の委嘱にご協力くださっている福井県立病院、社会福祉法人恩賜財団済生会支部福井県済生会病院、日本赤十字社福井赤十字病院、市立敦賀病院、公益財団法人若狭湾エネルギー研究センターの各機関、ならびに同研究会ご協賛の富士フイルム富山化学株式会社殿、第一三共株式会社殿にはあつく御礼申し上げる次第です。

また大会の運営にあたっては医学物理に関わる企業の皆様のご協力が不可欠です。実行委員の協力も得て、多数の企業の皆様からご協賛を頂戴しています。あらためて御礼申し上げます。

今大会は地方での開催ということで、地域での医療も世界と同等の水準でおこなっていることを示したいと考え、大会テーマを「地域の医療が世界へ広がる」といたしました。お越しの皆様のお住まいやご勤務先は、それぞれ都市部であったり地方部であったりするとは思いますが、そのような人口環境にかかわらず、皆様の地域での医療を世界水準でおこなっていること、そして世界水準も地域での医療をベースに構築されていること、が基本であるものです。このようなことの具現化した例として、今回は特別講演のお一方として、当地ご出身の大阪重粒子センターの金井達明先生にお話いただきます。また地方に所在しながらも世界的に業績が注目されている福井大学高エネルギー医学研究センターの岡沢秀彦先生からは核医学についての特別講演をいただきます。加えて、地域の研究活動が世界に広がる事例ご紹介を市民公開講座において当地の先生方にご紹介いただきます。

ここ福井は、最近まで交通の便がそれほど良くありませんでしたが、2023年の北陸新幹線の金沢敦賀間の延長開業の折りには東京まで新幹線一本で直行することになります。またその後も大阪へ新幹線がのびていくことになっています。この大会でぜひ福井についてご記憶たまわり、将来の新幹線開業の機会などもご利用になって再訪くださればほんとうに幸いです。

福井での大会に、当学会の会員やご協賛企業、一般の県民の方々も含め多くの方々にご参加いただき、医学物理において実りある大会となることを祈念しています。

(公財)若狭湾エネルギー研究センター
第118回日本医学物理学会学術大会
大会長 久米 恭