本文へスキップ

医療被ばく


 UNSCEAR(原子放射線の影響に関する国連科学委員会:United Nations Scientific Committee on the Effects of Atomic Radiation )2008年報告書において、日本は医療における被ばくが他国に比べて非常に大きいことが報告されています。医療被ばくの大きさに比例して健康リスクが増加するという考えは必ずしも正しくありません。なぜなら、日本において医療被ばくが大きいことは、CT・PET・放射線治療等の高度な医療に容易にアクセス可能であることを反映しており、それにより得られる便益も大きいからです。
 しかし、「医療のため」という理由で不必要に被ばくを増加させた場合、医療で受けた被ばくによるリスクが医療で得られる便益を越えてしまいます。 つまり、患者の医療被ばくでは、被ばくによる「リスク」と医療による「便益」のバランスを考えることが非常に重要です。
 ここでは、患者の医療被ばくにおけるリスクと便益のバランスを考える上で基礎となる知識、情報について紹介します。

1. 日本における一人あたりの年間被ばく線量


生活環境放射線(国民線量の算定)令和2年11月 原子力安全研究協会

2. 医療被ばくとは?

ICRP(国際放射線防護委員会)では、3つの被ばくの種類(職業被ばく、公衆被ばく、医療被ばく)と3つの被ばくの状況(計画被ばく状況、現存被ばく状況、緊急時被ばく状況)を用いて、放射線防護の方法を勧告しています。
・職業被ばくは放射線作業従事者が放射線を取り扱うことにより受ける被ばくで、公衆被ばくは、一般公衆が日常生活ので受ける被ばく(職業被ばく、医療被ばく及び自然バックグラウンド放射線を除く)です。
・ 医療被ばくは以下のように定義されています。
  1. 放射線診断、IVR(インターベンショナルラジオロジー)、放射線治療の目的のために個人(患者)が受ける被ばく(患者の医療被ばく)
  2. 放射線診断又は治療を受けた患者を介護する家族などの個人が承知の上で自発的に受ける被ばく
  3. 医学関連の研究で志願者(ボランティア)が受ける被ばく

患者の医療被ばくは、他の被ばくと異なる以下の特徴があります。
  1. 計画的で、患者の直接的な便益のための被ばく
    → 医療による便益を制限する放射線防護の方法は望ましくありません。
  2. 通常、短時間に限られた部位だけが被ばく
    →他の被ばく種類ではほとんどが全身の均一な照射による被ばくです。医療被ばくにおいては、ほとんどの場合、照射は局所的で、照射野内の臓器線量(等価線量)の考慮がより重要です。
  3. 患者の年齢分布が人口分布とは全く異なる
    →推計患者数は4歳以下と65歳以上にピークがあります。(下図)特に放射線感受性の高い小児に対しては特別の考慮が必要です。


・平成29年(2017)患者調査の概況(厚生労働省) http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kanja/17/index.html
・人口推計の結果の概要(令和3年8月概算値) http://www.stat.go.jp/data/jinsui/2.htm