大会長挨拶

 第110回日本医学物理学会学術大会を2015年9月18日(金)から20日(日)の3日間にわたって、北海道大学医学部学友会館フラテで開催いたします。本大会のメインテーマは「医学物理の未来を語ろう!―学術融合による新たな展開―」で、広い医学物理の領域を再認識し輝かしい未来を想像したいと考えています。2010年に日本医学物理学会では「医学物理学とはどのような学問か?」と問いかけ、「物理工学の知識・成果を医学に応用・活用する学術分野」であると定義し、診断物理学、核医学物理学、治療物理学、放射線防護・安全管理学、基礎医学物理学など、診断・治療の発展に貢献することにより、人類の健康に寄与する領域を積極的に取り込むとしています(日本医学物理学会ホームページ)。本大会では、医学物理学のそれぞれの領域の専門家が互いの領域を知ることで、新たな学術融合が生まれさらに発展することを期待した企画を準備しました。

 シンポジウム「診断と治療の融合技術」では、診断機器のMRIと治療機器のLinacの融合機器開発などを取り上げ、シンポジウム「医学物理の国際的コラボレーション」では、国内大学・研究所の国際的な学術融合をご紹介いただきます。さらに、診断領域の理解も深めていただきたく、特別セッション「診断領域におけるイノベーション」では、X線CT、核医学、超音波の斯界の権威をお招きし解説していただきます。また、国際セッション「世界で活躍する診断系医学物理士」ではMRIなどを専門とする医学物理士を海外より招き、放射線防護も含め日本ではなじみの薄い診断系医学物理士業務についてお話いただきます。また、特別講演「マルチスケールX線技術」では、医学物理学の要のひとつであるX線を取り上げ、細胞をナノレベルで見る技術、生体組織での相互作用のシミュレーション、μCTなどについて北海道大学を代表する研究者よりご講演いただきます。シンポジウム「粒子線治療技術の最前線」では、重粒子線、陽子線、BNCTに関する最先端技術をお話いただきます。

 第105回大会以降の春の大会で推進されてきた国際化を継承し、今回より秋の大会でも一般演題の発表スライドの全面英語化に踏み切りました。さらに、来春の第111回大会より演題登録時に倫理承認を得た研究であることを課す予定ですが、本大会の基礎講座「研究を行うために」では、研究倫理について専門家よりご説明いただきます。また、この基礎講座では、Radiological Physics and Technology誌の副編集長より投稿論文に見られる改善すべき事項なども含め研究の進め方をお話しいただき、さらに、大学ではない組織に所属の医学物理士の方から科学研究費取得についてご講演いただきます。

 9月の札幌は秋を迎える直前で心地よい気候です。大会の合間に訪れることのできる観光スポットも多く、新鮮なお食事もお楽しみいただけます。本大会で学術的に充実した頭をほぐしていただければと思います。

 多数の皆様にご参加いただき、医学物理の明るい未来を語る場になることを心より願っております。

北海道大学大学院保健科学研究院
山本 徹