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職業被ばくの実態

 

医療従事者の被ばく線量


ガラスバッジによる個人モニタリングサービスの報告書[1]によると、医療従事者の職種別の年平均実効線量は0.77 mSvで診療放射線技師が最も高い値であることがわかります。一方、実効線量が20mSv以上となる割合は医師で高く、50 mSvを超える報告もあります。IVRなどにおいて、医師は放射線の発生源に最も近い位置で手技を行うため、線量の最大値は増える傾向にあると考えられ、職業被ばくを最小化するためにも防護措置を適切に講ずる必要があります。

職種別の実効線量の推移をみると、2014年度に最も高い値となっているものの概ね横ばい状態です。業態種別の実効線量は、2017年度においては一般病院で最も高く、続いて診療所・その他、大学病院、保健所、歯科医院の順で高くなっています。近年では一般病院の実効線量は減少傾向ですが、診療所・その他、保健所で増加傾向となっています

作業内容・環境の適切な管理、防護に関する知識の共有、最新の医療機器の導入などにより、職業被ばくを低減することが望まれます。

表:職種別の個人年実効線量(2017年度)[1]
線量範囲(mSv) 0 ~5 5~20 20~50 50~ 実効線量(mSv) 水晶体等価線量(mSv) 皮膚等価線量(mSv)
医師 57791人 15014人 952人 37人 1人 0.29 0.84 0.96
診療放射線技師 12983人 17062人 588人 15人 0人 0.77 1.26 1.44
看護師 44133人 10492人 80人 0人 0人 0.13 0.49 0.53
その他 21334人 2853人 48人 1人 0人 0.09 0.23 0.34


図:職種別の個人年実効線量の推移[1]


図:業態種別の個人年実効線量の推移[1]

[1] 千代田テクノル 放射線安全管理総合情報誌FBNews No.501 「個人線量の実態」(2018.9.1)

医療従事者以外のの被ばく線量

UNSCEAR2008年報告書[2-3]によると、職業被ばくは①自然放射線源②核燃料サイクル③医学利用④産業利用⑤その他⑥軍事利用にカテゴリー分けされます。自然放射線源は、鉱山作業者に対するラドンからの被ばく、溶接作業者に対するトリチウム(Th)入りタングステン棒からの被ばく、航空機乗務員に対する宇宙線からの被ばくなどが挙げられます。職業被ばくは自然放射線源によるものが最も多く、職業被ばく全集団線量の約90%を占めます。人工放射線源による職業被ばくは、これまでは核燃料サイクルによる被ばくが主でしたが、現在では医学利用が主になっています。

UNSCEAR 2013年報告書[4]で福島第一原発事故に関する報告書が公表されています。東京電力の線量評価によると、事故後19か月間の作業者の平均実効線量は約10mSvであり、100mSvを超える実効線量を受けた作業者は全体の0.7%(173人)、作業者が受けた中で最も高かった実効線量は679mSvと報告されています。ただし、個人線量計が不足していた事故後早期の線量や内部被ばくの推定には不確かさが残っているため、事故後非常に早い段階での被ばく線量を詳しく把握するには、さらなる調査が必要と言及されています。

表:自然放射線源による年平均実効線量(1995-2002年)[2]
作業場所 作業者数
(千人)
年集団線量
(人・Sv)
年平均実効線量
(mSv)
炭鉱 6,900 16,560 2.4
その他の鉱山* 4,600 13,800 3.0
その他の作業場所 1,250 6,000 4.8
航空機乗務員 300 900 3.0
平均 2.9
*ウラン鉱山を除く

表:被ばく源別の年平均実効線量(2000-2002年)[2]
被ばく源 作業者数
(千人)
年集団線量
(人・Sv)
年平均実効線量
(mSv)
自然放射線源 13,050 37,260 2.9
人工放射線源 9,865 4,730 0.4
  核燃料サイクル 660 800 1.0
  医学利用 7,440 3,540 0.5
  工業利用 869 289 0.3
  軍事活動 331 45 0.1
  その他 565 56 0.1
合計 22,915 41,990 0.8

[2] UNSCEAR 2008年報告書 「SOURCES AND EFFECTS OF IONIZING RADIATION」
[3]第59回 原子力委員会資料第1号 「UNSCEAR 2008年報告書」
[4] UNSCEAR 2013年報告書「2011年東日本大震災後の原子力事故による放射線被ばくのレベルと影響」