第116回日本医学物理学会学術大会

大会長挨拶

この度、平成30年9月15日(土)~17日(月)の3日間にわたり、盛岡駅に隣接するアイーナ(いわて県民情報交流センター)において第116回日本医学物理学会学術大会を開催させていただくことになりました。私が所属する岩手医科大学教養教育センター物理学科の教員は全て医学物理学会員で、岩手県盛岡市で医学物理学術大会を開催させていただくのは光栄の至りに存じます。初代の磯部寛教授が約30年前に本大会を主催され、当時助手だった私もお手伝いしたことを思い出します。あっという間に時が流れ、再び三代目の私が本大会を主催することになりました。

大学院時代における私の専門は高圧力下の磁性でしたが、磯部先生の指示により東北大学と共同でフラッシュX線装置の開発を行いました。特に、高エネルギー放電により形成されるプラズマX線源からは、クリーンなK系列特性X線が発生し、制動線の無いスペクトルを見て感動したことを思いだします。また、当時、X線断層撮影のご研究をされていた高橋信次先生から文化勲章の記念品をいただき、今でも大切に保管しています。

東北大学から岩手医科大学に移設したフラッシュX線装置は今でも稼働できますが、現在はフォトンカウンティングX線CT、近赤外線CT、BGR-CT、Kエッジ造影、エンボスⅩ線撮影、半導体線量計、7T-MRIなどの研究を主に行っています。科研費も含めて研究助成金を比較的潤沢にいただき、スタッフにも恵まれて ほぼ計画通りに研究が遂行されています。

近年は癌の放射線治療に関わる技術の進歩が目覚ましく、医学物理学とは放射線治療学と言っても過言ではなくなったような気がします。しかし、放射線診断技術も日々進歩しており、放射線に関わる医療や研究においては、診断と治療の融合が重要であると考えています。よって、岩手県における第116回大会のテーマには「放射線医療における先進的な診断と治療の融和」「Harmonization of Innovative Diagnosis and Therapy in Radiology」が良いと考えました。

何といっても本学における放射線関連施設の目玉は7T-MRIとサイクロトロンですので、これらの研究成果を特別講演として発表していただきます。特に本学では2011年から上記7T-MRIスキャナーが本格稼働し、佐々木真理 医歯薬総合研究所長をリーダーとして多数のプロジェクトが同時進行しており、先駆的研究成果が世界に向けて次々に発信されています。

本学の薬学部では、国際宇宙ステーションで作ったタンパク質結晶の構造解析がシンクロトロンを用いて行われ、成果は創薬に応用されています。このような研究は医学物理の主流とは異なりますが、イブニングセミナーにおいて最新の創薬をわかり易く発表していただく予定です。

北海道に次ぐ広大な面積を持つ岩手県には、手つかずの自然や史跡などの観光名所が多く、冷麺、わんこそば、じゃじゃ麺の三大麺を含めた美味しいご当地グルメもたくさんあります。岩手の初秋を満喫していただければ、さらに楽しい学会の思い出を創ることができるでしょう。

岩手県での116回大会に、医学物理学会員や盛岡市民も含めた多くの方々にご参加いただき、放射線医療において実りある大会となることを祈念しています。

岩手医科大学教養教育センター物理学科
第116回日本医学物理学会学術大会
大会長 佐藤 英一