受賞結果情報

1. 第109回日本医学物理学会 大会長賞受賞者8名と寸評

放射線治療(光子・電子)2 O-014
臼井 桂介(順天堂大学医学部 放射線治療学講座)
コーンビームCTを利用した線量計算の精度に散乱光子がおよぼす影響の解析
本研究は、CBCTを用いた線量計算の可能性をモンテカルロシミュレーションにより解析し、散乱光子の影響を定量的に明らかにしたもので科学的価値が高いと判断される。散乱光子を除去したCT値と電子密度カーブの精度は、CBCTの中心で評価されているように思うが、コーン角の影響を受ける辺縁領域でも同様な精度を担保できるか疑問に残る点もある。今後、散乱光子の除去法や画質改善を含めて研究価値をさらに高めていくことが期待される。
放射線治療(光子・電子)9 O-076
仲本 宗泰(九州大学大学院 医学系学府 保健学専攻)
Improvement of automated monitoring approach of 4D dose distributions during SBRT based on 2D/3D registration with adaptive transformation parameters
本研究は、近年放射線治療分野において重要な課題のひとつであるIn-vivo dosimetryの四次元化に向けた研究開発であり、その手法をワークフローとして完成させている点で科学的・社会的価値が高いと判断される。特に、シネEPID画像を用いて、擬似四次元CT画像を作成している点は独創的であり、前回報告された提案手法を改良し、高精度化に成功した点では高評価できる。しかし、本手法の臨床応用という点において、計算時間および提案手法の精度に関して十分とは言えず、今後GPGPUを用いた計算の高速化、提案手法のさらなる高精度化を行うことで、研究の価値をさらに高めていくことが期待される。
放射線治療(粒子)6 O-093
高柳 泰介(日立製作所 日立研究所)
陽子線の大角度散乱を考慮した簡易モンテカルロ法の開発
本研究は、陽子線治療の高精度化に向けて、大角度散乱効果を考慮したモンテカルロ法の開発に成功した。大角度散乱効果について定量的に評価し、その効果を補正する方法は独創的であり、科学的価値が高いと判断される。また、計算精度や計算速度についても評価し、有用性を明確にしている点は完成度が高いと考える。今後、臨床例に対する本手法の評価を進めることで、さらに研究の価値を高めて行くことが期待される。
放射線治療(粒子)2 O-036
早乙女 直也(放射線医学総合研究所 重粒子医科学センター)
Range verification system for the carbon beam gantry at NIRS
本研究は、粒子線治療分野で特に重要となっている飛程の検証について簡易的で精度の高い方法を提案したものであり、実現可能性から考えて重要であると考えられる。今後更に、実効飛程とlight intensityが全てのエネルギー帯やビーム強度において一致する事象の背後にある物理現象などについて考察を加えることで、研究の価値を更に高めていけることが期待される。
放射線治療(粒子)4 O-048
田口 安則(株式会社東芝 研究開発センター)
重粒子線治療向け実時間マーカ追跡のための画像処理システム
粒子線治療の呼吸同期照射のために、患者の患部付近に留置した金マーカを、X線透視像で追跡し、同期信号を生成する画像処理システムについて取り上げた発表である。従来は、画像テンプレート登録のためにX線透視像においてユーザがマーカ位置を指定する作業が必要なのに対し、提案されている方式では、マーカの個数を指定するだけで、マーカ位置が追跡される点が、臨床現場で十分使用可能な技術であることが優れていた。また、その方式がFPGAに実装され、1フレーム当たり33ミリ秒以内で動作することが確認され、実用化が十分可能な技術であることも優れていると評価した。
磁気共鳴 O-128
上口 貴志(情報通信研究機構 脳情報通信融合研究センター)
心拍同期下超高磁場fMRIにおける高精度かつロバストなT1補正法の開発
本研究は、脳神経をはじめとする幅広い分野で注目を集めているfMRIの基礎研究である。超高磁場装置特有のSARとB1磁場の不均一性を考慮しながら、FAを最適化することによって心拍動から生じる生理的ノイズを除去し、BOLD信号の感受性を改善する手法を考案したものであり、科学的価値が高いと判断される。ただ、本研究の価値をさらに高めるためには生体での検討は必須であり、今後の研究成果が期待される。
磁気共鳴 O-130
唐 明輝(北海道大学 大学院保健科学院 保健科学専攻)
Brain arteriolar elastic mapping obtained from magnetic resonance signal fluctuations
- Application to dementia patients –

本研究は、予防医療・先制医療分野で特に重要となっている認知症の早期診断を取り上げ、脳細動脈の弾性を定量的に評価する可能性を示したものであり、科学的価値が高いと判断される。特に、BOLD信号の揺らぎを呼吸による影響と心拍による影響に分けてマップ化し、それらを用いて脳血流量の影響を補正している点は独創的である。また、認知症の進行とともに脳細動脈の弾性の変動係数が増加するという結論にまで到達している点は、高く評価できる。ただ、今回の発表では、研究対象人数が計4名と少ない点、変動係数の差の統計的解析結果が提示されなかった点で研究内容が十分とは言い難く、今後さらに研究の価値をさらに高めていくことが期待される。
放射線防護1 O-117
古場 裕介(放射線医学総合研究所)
CT撮影による被ばく線量評価WebシステムWAZA-ARI v2の開発とその利用
医療被ばくの防護の最適化については、世界各国の様々な先進的取り組みが紹介されている。いっぽう我が国では未だ被ばくの実態把握さえままならぬ中、古場氏らの取り組みが我が国の医療被ばく研究にもたらす影響は大きい。特に臓器線量や実効線量による評価が容易になったことで、放射線障害を防止するためのより具体的な対策を講じることが可能となった。まさに文字通り“技あり”な研究であり、いやVer.2であるから、もはや“一本”と言って良いのかも知れない。

2. 第109回日本医学物理学会 英語プレゼンテーション賞受賞者6名

放射線治療(粒子)2 O-036
早乙女 直也(放射線医学総合研究所)
Range verification system for the carbon beam gantry at NIRS
放射線治療(粒子)3 O-045
上口 長昭(住友重機械工業(株))
A Performance of Proton Line Scanning at Aizawa Hospital
X線診断2 O-085
佐藤 英一(岩手医科大学教養教育センター)
Measurement of X-ray spectra using a YAP(Ce)-MPPC detector and its application to dual-energy computed tomography
放射線治療(光子・電子)8  O-069
古徳 純一(帝京大学大学院)
Predictive modeling of respiratory motion using dynamic linear models
放射線治療(小線源) O-103
田村 健太郎(熊本大学大学院)
Dose distribution of 125I-brachytherapy sources using PHITS Monte Carlo code
核医学1  O-107
Ahmed Abdella M(放射線医学総合研究所)
Sensitivity Analysis of the Helmet-with-Jaw PET Using Geant4

3. 第109回日本医学物理学会 AFOMP旅費援助対象者2名

放射線治療(光子・電子)4  O-025
Dang Quang Huy(Univ. of Ho Chi Minh, Viet Nam)
Dosimetric Comparison of Field in Field Forward Plan with Bolus Using 20, 25 Fractions and 3DCRT Motorized Wedge without Bolus In Post-Mastectomy Radiotherapy of Breast Cancer
放射線防護2  O-025
Nguyen Thi Cam Tu(115 People’s Hosp., Viet Nam)
CALCULATION OF RADIATION SHIELDING FOR MEGAVOLTAGE GAMMA RAY FACILITY USING MONTE CARLO CODE EGSnrc